10月は、八百万(やおよろず)の神々が出雲大社に集まり、他の地では神様が不在になるため「神無月」という、と云われています。「無」は水無月の「無」と同じく「の」の意、「神の月」「神祭りの月」だそうです。祇園あきしのにも、お客様と云う名の神様がたくさんお越しくださり、29年目が始まりました。
創業当時、できるだけたくさんのお客様に、お越しいただいて、繁盛したいということばかり考えていました。どうしたら来ていただけるだろうと、自分なりに考え、様々に努力してきました。そのうち気が付きました。「たくさん」のお客様はいないんだということ、1人ひとりのお客様の結果が「たくさん」なんだということに。
京都には小さくとも世界から信頼され、尊敬される企業がいくつもあります。そこにしか作れないもの、そこにしかないもの、そこでしか味わえない…おもてなし…があるからです。1人ひとりのお客様と対峙し、その方のため、その方が気持ちよい時間、空間を提供することの積み重ねでしかないんだと、悟りました。日々の愚直な努力、誠実な心が芯となってそのお店を形づくる、基本のあいさつや掃除といった、何気ない日常の動作に魂が宿る、そういうことなんだと思います。
陰暦9月9日の重陽の日が、寒暖の分かれ目とのこと。この日からお酒は温めて飲むと良いとされてきました。そろそろ、温かなお酒を片手に、秋の食材に舌鼓を打ち、秋の夜長に楽しいお酒、美味しい京料理、そして笑顔の会話を。素敵なお客様と云う名の神様と、ご一緒にできます事、心より感謝申し上げます。
つづく